めがね その五 (結婚と引っ越し)
2014年の春
北海道から東京へ嫁いだ
都内で実家住まいだった夫が
先に借りて
暮らし始めたアパートに
ひとつ また ひとつと
ダンボールを送る 引っ越し方法
おかげで かなり
荷物を絞り込めた
自分自身が出発する日も
手荷物はトランクケースひとつ
空港では家族親戚が
見送ってくれた
夫はその日 他用で迎えに来られず
慣れたはずの
成田空港からの道中も心細く
ひとりで入ったアパートの部屋は
寂しい夕暮れ時だったけれど
あの日のおかげで 新しい暮らしへの
肝が据わった気がする
それまでの “ 暮らし ” のイメージは
広々 新築 一軒家 大型テレビ
駐車場 庭つき 自家用車 アウトドア
ソファ ベッド 対面キッチン などなど
(同世代の友人家族が皆そうだから)
しかし 同じ家賃でも
北海道と都内では全く違う
固定費はなるべくかけずと
決めた新居は古いアパート
しごく当然と
諦めもついたし
ベッドから 布団
自動車から 徒歩
テレビより 散歩
『 無ければ無いでいい 』
新しい価値観がおもしろく
不思議と居心地がよかった
すべて自由にさせてくれた
義両親には感謝
その頃 北海道の家族とは
短時間でも毎日のように
スカイプでテレビ電話していた
便利な時代や環境
『 無い 』快適さや
『 有る 』有り難さ
『 選び 』揃え始める楽しみ
『 ミニマリスト 』と言う
言葉を知る 約一年前は
こんなことを感じながら
“ 自分たちなり ” の
新婚生活スタートだった。
結婚前は遠距離ということもあり
記念日やイベントには ついつい何がしか贈り物を期待しがち
しかし 最近では 経験や時間が何より
楽しみにしていた第九も素晴らしく感謝
夫は『去年のクリスマス何してたっけ?』なんて
皮肉を言われることもない 平和な夜 メリークリスマス